手の上の記憶

忘れっぽいので ついつい左手にメモをしてしまう。
紙にメモをしても
それを見るのを忘れたり、なくしたり、いちいち取り出すのが面倒なので。
親指と人差し指の間のところに書くのだけれど、
メモが多いと 小指のほうへどんどん増殖していく。
魚屋さんのおじさんには たまに
それ、なんのおまじない? と 小声で聞かれる。
お仕事のお手伝いをしてくれるコは
しゃべるのももどかしいくらいあわただしいときは
ちょっとすみません、と言って 私の左手を見て忘れ物がないか確認している。
あと、忘れちゃいけないことを思い出すと
すみません、麻紀さん、手に書いてもらえますか?と言うので
あ、はいはい、と書き加えながら
いつも、なんだか違うかも????と思う。
今日、電車で隣に座っていた小さな男の子の左手には
肘の下から手の先まで 黒いペンでぐるりと螺旋状に線路が書いてあって
さらにその上を電車が走っていた。
同じ書くのでも、あちらはアートだなぁ。

